NOKID編集部
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アニメ・映画・配信コンテンツのプロモーションを担当している方なら、こんな感覚があるかもしれません。TikTok広告も、インフルエンサー施策も、UGC(ファンが自分で投稿する動画)を集めるキャンペーンも、ひと通りやり尽くした。それなのに、SNSの熱量が興行収入やチケット販売、配信視聴にどれだけ貢献しているのかは、いまだに数字で見えない。
その感覚は、正しいのです。
TikTok Spotlightは、その「見えなさ」を裏返す機能です。散らばったファンの投稿を作品ページに1か所へ集め、興行収入・チケット・配信という売上に変える。いわば、ファンの熱量を受け止めて売上に変える「受け皿」です。
拡散させるための第一世代のTikTok広告、第二世代のインフルエンサー施策とは、働く向きが逆。拡散ではなく、集めて、売上につなげる——第三世代がもう始まっています。
米国では4作品で効果が裏づけられ、日本でも『怪獣8号』を皮切りに展開が始まりました。なぜいま、ファンを"集める"設計が業界を変えつつあるのか。そして自社のIPで、この受け皿をどう使えばいいのか。詳しく見ていきましょう。

TikTok Spotlightは、ファンの投稿を「集めて、売上につなげる」ことに特化した、映画・テレビ向けのプロモーション機能です。
TikTokのあちこちに散らばったファン投稿を、作品ごとの専用ページに1か所にまとめる。そのページから、配信サービスやチケット購入へまっすぐ案内する。ここが、ただ動画を流す従来のTikTok広告とはっきり違う点です。

TikTok Spotlightは、TikTokが公式に「映画・テレビシリーズ向けプロモーション機能」と定義している仕組みです。米国版は2024年8月8日に提供が始まり、TikTok Global Head of Publishers のJames Stafford氏らが発表しました。
導入したWarner Bros. Motion Picture Group の Cameron Curtis氏(EVP Digital Marketing)は、これを「マーケティングに欠かせないツール」と評価しています。
日本版は2025年7月18日(金)に提供開始され、第1号作品としてアニメ『怪獣8号』が選ばれました。シリーズものや続編にも対応するため、続きものTVアニメや劇場映画の世界同時展開とも相性が良い設計になっています。

参考:TikTok Newsroom「TikTok Spotlight: A new way to tap into the entertainment community」 - TikTok / TikTok Newsroom 日本版「TikTok Spotlight」提供開始 - TikTok
最初のステップ「集める」を担うのが、アンカーリンクという機能です。動画から作品の公式ページへ直接飛べる案内リンクのことです。

仕組みはこうです。まずAIが、作品に関係する動画を自動で見つけます。次に人の目で、内容に問題がないか(暴力的・不適切な投稿でないか)を確認します。問題がなければ、その動画を投稿した人の名前の上に、リンクが自動で付きます。視聴者はそこをタップするだけで、作品の公式ページへすぐ飛べます。
ここでの設計の狙いに注目してください。これまでのSNSプロモは「投稿を増やす(拡散させる)」ことに力を入れてきました。しかしSpotlightは逆に、すでに投稿されているファンの動画を「1か所に集める」方向に働きます。散らばっていた大量の投稿が、1つの作品ページに集まっていく流れが生まれるのです。
集められたファン投稿は、作品の専用ページに積み上がっていきます。このページには4つの要素が並びます。

作品のあらすじ、キャスト情報、公式アカウント、そして世界中のファンが投稿したUGC(ファン自身が作った動画や画像)を集めたコーナーです。
怪獣8号のキャンペーンでは、ここにゲーム的な仕掛け(遊び要素で参加を促す工夫)が加わりました。投稿した動画の再生回数が1000回に達すると怪獣8号、9999回に達すると怪獣9号のプロフィールフレーム(アイコンを飾る専用の枠)が手に入ります。ただ見るだけで終わらせず、ファンに「参加したくなる理由」を渡す設計です。
このページの役割は、熱量を一時的にためておくだけではありません。次の「つなげる」段階へ、ファンを自然に送り出すための通り道になります。
最後のステップが「つなげる」です。作品ページから外部の配信サービスやチケット販売サイトへ、ユーザーをそのまま送り出します。集まった熱量を、ここで実際の売上に変えるのです。
米国では、この「つなげる」部分がもう一段進みました。2025年9月4日にTikTokとFandangoが提携を発表し、作品ページに「Get Tickets(チケットを買う)」ボタンが付いたのです。
Fandangoは、米国最大のオンライン映画チケットサービス。このボタンを押すと、TikTokを離れずに座席選びから購入まで進めます。第1号の作品は、ディズニーの『TRON: Ares』(2025年10月10日米国劇場公開)でした。
日本では今のところアプリ内でチケットを買う仕組みはなく、外部のチケット販売サイトへ直接リンクするのが基本です。ただし、スタジオ(製作・配給側)には分析ダッシュボード(ファンのデータを見られる管理画面)が用意されており、ファン層の情報(年齢層、地域、関心のあるシーンなど)を取り出して、次のキャンペーン設計に活かすことができます。
仕組みは分かりました。では、この「集めて、つなげる」やり方は、実際にどれくらいファンの熱量を売上に変えてきたのか。米国で先行している4作品の数字が、その力をはっきり示しています。
参考:TikTok and Fandango team up to launch movie ticketing integration - TikTok

米国では、TikTok投稿の伸びが「その後の興行収入が落ちにくい」ことを予告する先行指標として働く——この関係が4作品のデータで初めて裏づけられました。
ここから先は数字が続きます。ただ、退屈な羅列ではありません。4作品それぞれが、この仕組みの違う側面を実証しているからです。
Built By Fandomは、Cinema United、TikTok、Comscoreの3者が2026年4月14日に共同で発表した業界レポートです。4作品の興行収入データとTikTok投稿数の関係を、初めて体系的に示したものです。
Cinema Unitedのプレジデント兼CEOであるMichael O'Leary氏は、レポートの結論をこう評価しています。TikTokの盛り上がりは、一時的なブームではない。その後の興行収入が落ちにくいことを前もって示すサインになっている──。
この評価には大きな意味があります。これまでSNSのプロモーションは「数字で測れないもの」とされ、いくら予算を回すべきかの根拠があいまいでした。
レポートはここに踏み込みました。TikTokの投稿数の増え方(前の週との比較)と、興行収入の落ちにくさ(公開初週末→第2週)。この2つの間にはっきりした関係があることを、実際の4作品のデータで示したのです。市場の大きさも見えてきます。2025年には、映画・TV関連の投稿が1日平均650万件もTikTokで共有されていました。
参考:Built By Fandom Report - Cinema United
公開初週末から第2週にかけて興行収入がどれだけ落ちずに持ちこたえるか──この「落ちにくさ」(ホールド率)は、映画ビジネスでとても大事な指標です。この指標で、TikTok Spotlightを使った2作品がはっきりした数字を残しました。
Warner Bros.の『罪人たち(Sinners)』は、投稿の伸びと興行収入の落ちにくさが、どちらも公開後に現れた作品です。
気をつけたいのは、この459%が「公開週の中での前週比」だという点です。宣伝段階ではなく、公開した後に数字が伸びています。そして第2週の下落はわずか5%。この落ち込みの小ささは、2025年に全国一斉公開された作品の中で最高の成績です。
『The Housemaid』も、良い傾向を示していました。
通常であれば、映画は週を追うごとに観客が減るので珍しい粘り方です。この間、TikTok上の活動量は13%増えていました。ファンの投稿が興行収入を下支えしている様子がうかがえます。
この2作品に共通するのは、投稿数の増加が「公開した後」に起きていることです。宣伝段階の盛り上がりではなく、公開後にファンが自分から投稿することが、興行収入の落ちにくさを押し上げる──そんな構造が見えてきます。
参考:Built By Fandom Report - Cinema United
『罪人たち(Sinners)』と『The Housemaid』が、公開後も落ちないことを示すなら、Universalの『ウィキッド 永遠の約束(Wicked: For Good)』とDisneyの『Zootopia 2』は、この仕組みが扱える熱量の大きさの上限を示しています。
『ウィキッド 永遠の約束(Wicked: For Good)』では、けた違いの伸びが起きました。
投稿の中身は、人気を集めた歌のマネ動画、衣装やメイクの変身動画、友情をテーマにした語りが中心でした。
『Zootopia 2』は、Spotlightの機能を最も幅広く使った作品です。
公開前から第2週まで投稿が伸び続け、その勢いが興行収入の上積みに直結しました。
4作品の数字を並べると、この仕組みは規模を問わず働くことが分かります。
Sony PicturesがShorty Awardsに提出した『Venom: The Last Dance』のキャンペーンまとめは、TikTok Spotlightを使うとどこまで大きな数字が出せるのか、その最大級の事例として記録されています。
Sonyが広告賞Shorty Awardsに応募したときの実績資料では、4つの投稿がそれぞれ2,000万コメント超を記録し、TikTokのそれまでの最高記録だった1,300万コメントを上回りました。
主な数字は次の通りです。
なお、Sony側はこのキャンペーンが世界興行収入を大きく押し上げたとまとめていますが、これは出品者であるSony自身の自己申告である点には留意が必要です。
※Comment Easter Egg施策(決められた言葉をコメントすると、画面に特別なアニメーションが表示される機能。この作品では8種類の仕掛けが用意された)全体の成果
4作品の数字は、ユーザー側の行動データからも裏づけられます。

Built By Fandomレポートに引用された米国ユーザー調査では、TikTok上での行動が「見つける→調べる→買う」という3段階で進んでいました。
調査はTikTok Marketing Science US Custom Theatrical Survey via AYTM(2023年10月実施)で、対象は18歳以上のTikTokユーザーです。最後のチケット購入まで36%が進んでいる点が、「集めて、つなげる」最終段階がちゃんと効いていることを示す数字です。
ただし、ここまでは米国の話です。コンテンツを持つ企業がいちばん知りたいのは、自社の作品がある日本でも同じことが起きるのか。次に日本での実例を見ていきます。
日本のアニメ作品は、TikTok Spotlightの機能進化を引っ張る主役の舞台になりつつあります。提供開始から半年強で「日本作品初」の機能実装が2回も続いたことが、その証拠です。
米国の数字を見て「日本では難しそうだ」と感じた方がいるかもしれません。しかし、日本での3つの事例は、規模の違いはあっても同じ仕組みが確かに働いていることを示します。

日本版TikTok Spotlightの第1号作品は、アニメ『怪獣8号』第2期でした。2025年7月18日(金)に提供を開始し、キャンペーン期間は7月18日から8月17日までの1カ月間です。
タイミングが巧みでした。アニメ第2期の放送・配信開始は翌7月19日(土)23時。放送が始まる直前にキャンペーンをぶつける設計だったのです。
ゲーム的な仕掛けでは、動画の再生回数が1000回に達すると怪獣8号、9999回に達すると怪獣9号のプロフィールフレーム(アイコンを飾る専用の枠)が手に入る仕組みが用意されました。ファンに「投稿して終わり」ではなく「投稿した後も再生回数を伸ばしたくなる理由」を渡す設計です。
参考:TikTok Spotlight 日本版ローンチ - TikTok Newsroom
怪獣8号のキャンペーンには、もう一つ注目すべき点があります。アニメと音楽を組み合わせ、最初から世界に向けて設計されていたことです。
第1期の主題歌はYUNGBLUDとOneRepublic、第2期はAURORAとOneRepublicという顔ぶれでした。海外アーティストが日本のテレビアニメの主題歌を担う。これ自体が、世界展開を前提にした設計だと分かります。
実際のキャンペーンも、日本だけにとどまりませんでした。北米、中南米、東南アジアなど複数の地域で同時に展開し、日本と北米では「Search Hub」(作品に関係するキーワードで検索すると専用ページが出る機能)も用意されています。
アニメ × 海外アーティストの主題歌 × 世界同時展開。この組み合わせが、Spotlightの「集めて、つなげる」仕組みとよく噛み合います。海外でアニメを見たファンの投稿が、日本国内のファン投稿と同じ作品ページに集まる。だから、世界中の熱量を1か所にためられるのです。
『呪術廻戦』とTikTok Spotlightのコラボは、2段階で展開された点に注意が必要です。多くの記事が混同していますが、機能実装の時系列は明確に2つに分かれます。

第1段は2025年10月31日にスタートしました。劇場版『渋谷事変 特別編集版』×『死滅回游 先行上映』(11月7日日本公開、12月5日北米公開)を記念したキャンペーンです。
ここで「Search Easter Egg」機能が、日本の作品として初めて使われました。TikTok上で「呪術廻戦」に関係するキーワードを検索すると、3種類のエフェクト(画面に出る特殊効果)が表示される仕掛けです。期間は10月31日から11月1日の2日間限定でした。
投稿キャンペーン本体は10月31日から11月30日までの1カ月間、「劇場版『呪術廻戦』渋谷事変×死滅回游 on TikTok」として展開されました。10月30日にはTOHOシネマズ渋谷で登壇イベントが開催され、各メインキャストが集結しています。
参考:呪術廻戦×TikTok Spotlight グローバル導入 - TikTok Japan note
第2段は2026年2月26日に始まりました。TVアニメ第3期「死滅回游 前編」の放送開始連動キャンペーンで、こちらは「Comment Easter Egg」を日本の作品として初めて実装した点が決定的に異なります。
Comment Easter Eggは、米国で『Venom: The Last Dance』が世界記録(4投稿それぞれ2,000万コメント超)を更新したのと同じ仕組みです。決められた条件でユーザーがコメントすると、画面に特別な効果やアニメーションが表示されます。
日本の作品で初めてこの機能が解放された。これは、TikTok側が日本のアニメ作品の熱量を本格的に扱う段階に入ったことを示しています。
第2段のキャンペーンは14カ国・地域での投稿キャンペーンとして展開され、うち4カ国でSearch Hubも一緒に展開されました。日本作品初の機能実装が短い期間に2回続けて起きたのは、偶然ではありません。日本のアニメ作品が、TikTokが世界向けの新機能をお披露目する「見本の場」に選ばれ続けている状態だと考えられます。
アニメ制作の現場感覚から言うと、ここで重要なのは「機能の新しさ」よりも「ファン投稿が作品ページに集まる流れが、日本のアニメで実際に成立している」という点です。次のH2では、この仕組みがアニメ以外の分野でも働くのかを確かめます。
ここまでで、米国・日本の両方でこの仕組みが働くことを確認できました。残る問いは、アニメ以外の領域──音楽、書籍、ゲーム、舞台──でも同じ仕組みが使えるのか。どこまで応用できるかを正直に確かめていきます。
参考:呪術廻戦TVアニメ第3期グローバルキャンペーン - TikTok Japan note
前半にお伝えした通り、公式の定義は「映画・テレビシリーズ向けのプロモーション機能」で、シリーズものや続編(フランチャイズ)にも対応します。対象がこの範囲に絞られているのは、Spotlightが「作品公開という節目の後にファンが投稿する」流れを前提に設計されているためと考えられます。
明確な公開・放送のタイミングがあり、それに合わせて投稿が生まれる形が投稿を集める入り口とよく噛み合うのです。
音楽には、別機能のFan Spotlightが用意されています。2024年5月20日に提供開始、アーティストが最大5つのファン動画を最大7日間ピン留めできる仕組みで、映画向けSpotlightとは別物です。楽曲やMVのプロモーションを考える音楽レーベル・配信サービスは、こちらが本命になります。
書籍・ゲーム・舞台については、2026年5月時点で公式の活用事例は確認できていません。書籍には各種コミュニティがあり、ゲームやライブ公演でも別のイベントは行われていますが、いずれもSpotlight機能の公式活用ではありません。
機能の本質(散らばった投稿を集め、配信・購入へ送り出す)を踏まえれば応用の余地はありますが、現時点で「使える」と言い切れる公式の根拠はなく、今後の発表を待つかTikTokへの個別確認が現実的です。

判断軸は、視聴者を集めたあと売上につなげられるかです。すでに散らばっているファン投稿を作品ページに集め、そこから興行収入・チケット・配信へ送り出す——拡散重視より、かけた費用に対する効果を測りやすいのが、この機能の強みでした。
働かせるには3要素が要ります。
(1)コンテンツの蓄積(集める素材となるファン投稿や公式の発信があるか)
(2)クリエイターと組む体制(投稿を集める入り口とごほうびを用意できるか)
(3)外部へ送り出す準備(配信・チケットへの導線と公開スケジュールの連動)
まずは自社作品で3要素の現在地を点検し、最も詰まっている1つから補強してください。
アニメ制作の現場経験から見ると、特に詰まりやすいのは送り出す先の準備です。公開スケジュールと配信・チケット販売の連動が、最終的な成果を決めます。ぜひ活用してみてください。
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現代の視聴者は、無料でコンテンツが手に入り、見たくないものは簡単に非表示にできるため、強制的に見せる従来の広告手法は通用しません。特にTikTokなどのショート動画プラットフォームでは、視聴者の関心を瞬時に引きつけなければならないのです。
では、視聴者の関心を引く投稿にするためにはどうしたらいいのでしょうか?
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